建築家/ 小見山 健次
●荒海をさまよう子供たち
子供たちのことから話を始めたいと思います。
めまぐるしく移り変わる現代社会の中で、子供たちにまつわる様々な事件がマスコミを賑わし続けています。このところ政治や経済を動かす大人たちによる低次元な犯罪までが横行し、正しく導かれるべき子供たちを乗せた船は、道標としての羅針盤を壊され、荒海をただただ漂流しているかのようです。倫理の荒廃した、混沌を極める現代社会の中で、子供たちは戸惑い、傷つき、あたかも微かな遠い光さえも見いだす術がない船の哀しい乗船者のようです。
●癒しの場が求められている
身近な教育の場、学校の原点としての「寺子屋」は少数精鋭を標榜する面倒みのいい学習環境の代名詞でした。ところがそうした一元的な《学習の場》ではなく、子供たちの病んだ心を《癒す場》としての教育環境が今求められているようです。人と人との触れ合いの中に成り立つ〈温かくて近しい関係〉、それは「赤ひげ」先生を連想させます。病んだ時いつでも駆け込め、自分のことを最も良く理解してくれるホームドクターとしての「町医者」が求められているのです。
●Aさんのこと
建築の話をしたいと思います。
都内で定期的に開催されているある住宅相談会でのこと。Aさんという一人の女性が相談者として私の前に現れました。住まいをハウスメーカーに依頼したが計画図の内容がどうも納得できないので見てほしい、というものでした。新建材で覆われた片流れ屋根。延べ約40坪程の総2階建て。1、2階ともほとんどドアも壁もありません。良くある団地の戸建て風ではありますが、カタチはどうみても不恰好。色も質感も到底緑豊かな土地に馴染むとは思えない内容でした。Aさん曰く、『。住まいの設計を依頼したいというつもりで数ヶ月前に建築家の団体が主催する別の相談会に2度足を運びました。緩い傾斜地ですけれど広い土地があります。予算は1500万円。設計料や諸経費を含めて30坪から40坪程度で、年老いた母と私が住める家の設計をお願いしたい』という内容でした。
寺子屋から町医者へ
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ローコスト住宅宣言-1