●建築家は冷たい…
『1ヶ月ほどして、再度出向いたときにその相談会の事務局から「残念ながら設計の希望者が出ませんでした」という返事をもらいました。意外な答えに落胆した私は、建築家というのはなんと冷たいのだろうと思いました。途方にくれながらも仕方なく工務店やハウスメーカーをあたることにしました。結果、哀しいかな工務店はどこも相手にしてくれません。予算が少ないせいでしょうか、ハウスメーカーも口をそろえるようにうちでは無理といい、唯一返事をしてくれたのがこのB社だけだったのです』。
今回私が受けた相談は建築材料の種類について教えてほしい、というものでしたので余計なお世話とは思いましたが、その計画図を見たときに思った素朴な疑問を、むしろ批評のように述べてしまいました。それはなぜこんなに大きな家にしなければいけないのかということ。そしてなぜ新建材といわれるような素材を多用しなければならないのか。そしてもっと使いやすい間取りがあるのではないかということでした。そして結局のところ、それらの疑問はまさにAさんがB社の提案に納得出来なかった理由と重なっていたのでした。「予算が少ないというのになぜこんなに大きな家にするのですか」と問うと『私は大きくしたいわけではなかったのですがこのメーカーではこれより小さな規格は出来ないからといわれました』。「屋根の色も形もバランスが悪いし、もっと安い材料でも周りの環境に溶け込むような材料はあると思います」というと『メーカーでは規格寸法と指定された材料の中から色を選ぶしかないのです』。「そして、何故玄関がここに…。こちらにすればもっと部屋が広く使えるのでは」…等など、失礼とは思いましたが思いつくままにアドバイス、というよりは批判めいた少々きつい指摘をさせてもらってその場は終了したのでした。
●嘆願
それから約1ヵ月後、私のアトリエにAさんから直接電話が入りました。『契約後だったのでお金は掛かってしまいましたがこのほどB社への依頼を解約しました。その後インターネットで検索して興味深い仕事をしていそうな建築家を数人探し出しました。勇気を出して直接お願いしてみることにしました。その中のお一人としてあなたを選ばせて頂いたのですがもう一度会ってくれませんか』という内容でした。そしてさらに1週間ほどして、Aさんは私の事務所を訪れました。設計事務所のC社は積極的には話しを聞いてくれなかったこと。同じくD社にはほとんど事情を理解してもらえなかったこと等など…。肩を落としながらそうしたことを私の前で話されました。1500万円の予算は契約解消などですでに1400万円近くになっていました。Aさんはさらに続けました。『私とお母さんが住むだけの家なんです。バリアフリーの配慮さえあればいい。ドアも壁もなくていいですし暮らしやすい間取りであれば面積にもこだわりはないのです』と。
寺子屋から町医者へ
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ローコスト住宅宣言-1